最上の家庭学習についての考察

家庭学習

「きょうしろう」と申します。現役小学校教員です。日々の実践や私見など、徒然なるままにつづります。今回は「家庭学習」についてです。

そもそも家庭学習の目的は「学校で学んだ内容の定着」と「学習習慣の定着」の2点である。児童個々により、興味が先行して自主的に学ぶ場合や、コンクール等への応募のために取り組む場合など、別の目的での学習もあることはあるが、一般的には上記2点が中心となる、であろう。

となると、まず家庭学習の前提として「学校で学んだ内容のおさらい」が課される必要がある。特に算数では習熟の助けともなるので、手っ取り早く反復のプリントを配付して宿題とすることが多い。それに加えて、低学年や中学年なら音読の課題がプラスされたり、高学年では自学ノートが課されたりといったことが、いわゆる家庭学習の主流といえる。

ちなみに児童の多くは、内容はどれであれ、こういった家庭学習をそれほど苦だとも負担だとも思っていないように感じる。確かに、その気になって取り組めば15分程度で終わる内容なので、習慣化してしまえば大したことはないのだろう。夕飯の前にササッと終わらせて、あとはのんびりテレビアニメやらゲームやら動画視聴やらに費やす方を選ぶ児童が多いのも当然といえばそうか。

宿題のプリントでいえば、もう1つ特徴的なのは、もし分からなくても家族に教えてもらえるという状況下で進めている児童が多いというのも感じることが増えた。これはつまり、自宅で子どもが学習する「時と場」に、年長者が同席している率が高いことを意味している。私見だが、実はそれがいちばん効率的な進め方なのではないかと思う。子どもが解いている問題を、親が横で一緒になって解いてみるなんて図があってもいいし、ダイニングのテーブルでプリントに取り組んでいるのを、親が横で見ながら夕飯の支度をしているなんていうのも好ましい図だと思う。

そもそも子どもが学校で毎日5時間も6時間も勉強に臨めるのは、教室になら一緒に学習する他者がいるからこそである。教師も友だちもいない自宅では、それよりずっと短い時間であっても、自分ひとりで学習を進めるのは苦痛でしかない。モチベーションも上がるわけがない。せめて誰かしら家族が一緒だから、なんとかやる気をつなぎとめているのだ。

さて、先ほど「自学ノート」という課題について触れたが、これはまさに学習する内容自体を自分で決めて進める学習ノートであり、教科も内容も問われない。実はこれが「学習内容の定着」「学習習慣の定着」にもっとも直結するだろうと、私自身は思っている。

初めてそのノートに取り組むときのガイダンスで、教師の口から「何を書いてきてもいいよ」と児童に投げかけたとして、果たしてどれだけの児童がそこから主体的な学習内容を導き出せるかと考えると、それほど多くはないだろう。「何をしていいか分からないから、プリントの方がいい」というのは、毎回この学習を課すごとに複数の児童から聞かれる声である。

そんな声が上がることが分かっているから、最初のガイダンスで5つも6つもの例を挙げる。だが多くの児童は、やはりこれまでやってきた学習と類似したものに偏る。つまり、日記、漢字練習、計算練習あたりとなるわけだ。中にはほぼ毎回イラストを描いてくる児童もいる。偏見かもしれないが「絵を描くのが好きだから」「もっと絵が上手になりたいから」という理由でそれを選ぶ児童はほぼ皆無である。つまり、やはり学習の内容が思いつかないことと、それでも1ページ埋めるのに手っ取り早いことが描画を選ぶ理由なのだろう。

実は先に述べた5つ、6つの例のうち「悩んだときにはぜひこれを!」というおススメ課題がある。「その日、学校で学んだ内容を、もう一度ノートにまとめ直す」というものである。この学習は、あらゆる家庭学習の内容のうち、教師の目から見た最上位であるように思う。

学校でも黒板を見ながら自分でノートにまとめてはいる。だがそれを理解したかどうかは、その時点では不確定だ。だが、一定の時間を置き、家庭学習としてノートに再現できるのであれば、確実に定着したことが自分自身で確かめられる。仮に、学習内容を自学ノートにうまくまとめられないなら、または、授業中に書いた一文や式の意味が、家でもう一度見返したときによく分からないなら、その気づきこそ大きな意味をもつ。そこで再度じっくり考えてもいいし、ここがよく分からないということをノートに記述してきてもよい。その不明瞭さについて翌日の授業で的を射た質問ができるし、自分はまだよく分からなかったんだという気づきは、必ずその日以降に生かせる。

だが実際は、その内容で自学ノートを埋めてくる児童は、ほんの少数派である。やはり、分からない(かもしれない)ことや、細かな説明が必要となるものより、明確で簡潔でパパッと終了できるものの方が、児童にとっては取り組みやすいのだろう。何の学習内容を選択するかまで含めて「自学」なのだから。

最後までお付き合いいただき、ありがたき幸せです。またお会いできますように。

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